T2 トレインスポッティング

『T2 トレインスポッティング』(原題: T2 Trainspotting)は、2017年製作のイギリスの映画。1996年の映画『トレインスポッティング』の20年ぶりの続編。

イギリスでは、2017年1月27日(現地時間)に世界最速公開され、29日までの3日間で興行収入7億円を突破する大ヒットを記録した。

Wikipedia - T2 トレインスポッティング

スラムドッグ$ミリオネア(Amazonビデオ)」や「28日後…(Amazon)」などの作品で有名なダニー・ボイル監督による「トレインスポッティング」の続編である。

さて、この「トレインスポッティング」はどういった話なのか。

「トレインスポッティング」というクソ野郎どもの物語

この作品の舞台は、1996年頃のスコットランドの首都エディンバラ。
当時のイギリスはサッチャー元首相らが脱工業化政策を進め、炭鉱や工場が多く閉鎖された。
鉱山などを有するスコットランド経済は大きな打撃を受け、多くの国民が不況に喘いでいた。

そんな絶望的な時代の中で、ヘロイン中毒になった若者たちの日常が描かれる。
ドラッグ、酒、女、窃盗、喧嘩、クラブ、金…怠惰でクソのような毎日が過ぎていく。


とまあ、ここまで書くと初見の方は強い抵抗感を持ってしまうだろうか…。

だが、この映画で描かれるストーリーのスピード感、爽快感は実に素晴らしい。
どこかドラッグのような快感を覚えさせ、一方では目を背けたい現実も広がる。
よくある青春物のようなストーリーもあれば、当時の世相を反映した世界観や、ズルズルと周囲に流される主人公の姿も描かれる。

加えて、冒頭に流れるイギー・ポップのLust for Lifeを始めとしたロック音楽が心地よい。
さすがはロックの本場、イギリスといったところだろうか(イギーはアメリカンだけど…)。


Lust for Life/the Idiot
Iggy Pop
Imports
2010-09-21
音楽、演出面での芸術性も優れており、サブカル好きには外せない1作になるらしい(友人談)。
Lust for LifeはあのDivid Bowieがプロデュースしていた時期の名曲。
上記のYoutube公式動画を是非視聴ください。

そして、主演はあのユアン・マクレガーであり、彼の出世作である。
スターウォーズ新三部作(Ep1-3)でオビ=ワン・ケノービを演じた俳優といえば分かるだろうか。
彼を含めスコットランド出身の俳優を中心として配役されているのもポイントだ。

1作目の雑感とか

主人公レントンはヘロイン中毒者。
友人のバグビーは酒癖が悪く、いつも喧嘩に明け暮れている。
ヤク中だが頭がキレて女にモテるシックボーイ。
周りに流されやすいが優しく人の良いスパッド。
真っ当な人間だったが、失恋からヤク中に堕ちるトミー。

主人公らは終始ヘロインを打ってばかりで、最初はぎょっとするシーンばかりであった。
だが、彼らがヤクを打つ度に彼らの世界はスピーディに動き出す。
町を駆け抜ける爽快感、酒や踊りでハイに登っていく感覚。
気付けば音楽と共に作品に飲み込まれてしまっていた。

一方で、彼らの楽しい"青春"と"日常"はいつまでも続きはしない。
中毒の副作用、軽犯罪による逮捕、失恋、人の死、喧嘩…。
幾度となく、急上昇と急降下を繰り返していく。

特にレントンが薬を断つために家族に拘留された時の禁断症状のシーンはすごい。
天井を這う赤ちゃんの不気味さなどは虫唾が走るような気持ち悪さを覚えた。
世界が歪んでいく様子は、感覚が狂っていくのはこういうことなのかとゾッとした。

しかし、不思議な事に見終わる頃にはすっぱりと終わり、スッキリした気分にすらなる。


ただ、やはり人によっては強く不快に感じてしまうこともあるかもしれない。
しかし、その後味の悪さも含めて良い映画なのではないかと思う。

結局彼らはクソ野郎どもであって、決して幸せな未来などないだろう。
それでも、人生を選択し、もがき生きて、そこから脱していこうとする者もいる。
レントンは、最後に一つの答えを選んだのだ。

間違えてはならないのは、この映画は薬物をイカしたものだと言ってるわけではないことだ。
確かに音楽や演出にはエンターテインメント性を持たせ、ノリと勢いで魅せている部分は多い。
何も考えず表面的に見て終われば、ただそれだけのジャンキーな映画だ。

だが、クソみたいな奴がどういう経緯で堕落し、深みに落ちていくのか。
一方で、どうやってそこから抜け出す選択をするのかが大事なのだ。

ドラッグや暴力に対する善悪の考え方ではなく、彼らが何を選択するのかを見てほしいと切に願う。
そういった見方と共に演出や音楽などの芸術面にも魅力を感じて貰えれば幸いである。

選択というテーマは2作目の方が色濃く出ているので、続編も見ていただきたいところだ。

T2(2作目)の雑感とか

仲間の金を持ち逃げし、オランダへと飛んだレントン。
20年の歳月を経て、彼はスコットランド、エディンバラへと帰ってきた。

エディンバラにはかつての仲間だったベグビー、サイモン(シックボーイ)、スパッドがいた。
やはり彼らは未だろくな人生を歩んでは居なかった。
刑務所にいる者、揺すりや売春で金を稼ぐ者、薬に溺れて妻や子供と離れて暮らす者。

そして、レントン自身も仕事を失い、家族を失いつつあった。

かつての持ち逃げからレントンはベグビーやサイモンの怒りを買っていた。
再開したレントンとサイモンは表向きはかつてのように薬や軽犯罪に手を染めて過ごす。
だが、彼らは20年前から抜け出し切ることができなかったのだ。
ベグビーはレントンへの復讐に燃え、サイモンも静かに機会を伺う。

そして今作はサイモンの彼女になったベロニカが話に絡んでくる。
彼女は自分の店を持ちたいと考えており、サイモンが協力していた。

そのための資金をカード窃盗によってかき集めるのだが……。


今作では、前作ほどドラッグは重要な要素ではない。
一方、レストランでレントンがベロニカにまくし立てるように喋るシーンがある。
そこで何度もリフレインされるのが"choose"という単語だ。
ひたすらに「選べ!」と繰り返されるのだ。

Choose life, choose facebook, twitter, instagram, and hope that someone, somewhere cares.
Choose the ones you love, choose your future, choose life.
セリフの全文はこちら(外部サイト)

レントンたちは再び選ばなければならない。


ただ、やっぱり彼らは全然成長できていなかったようだ。
依存から抜け出せず、堕落した生活を続けている。
彼らほどではなくとも、誰にでも多少の経験はあるだろう。
自分自身も20年前からどれだけ成長できたか分からない。
そして、自分自身も選択を迫られるのだ。
人生を、未来を。


後半では、スパッドが才能を開花させ、小説を書き始める。
その物語は彼らクソ野郎どもの物語だ。

彼の小説は本になることが決まるが、最後までそのタイトルは明かされなかった。
だが、きっとそのタイトルは「トレインスポッティング」なのだろう。
これが彼らの物語である。